シンクヴェトリル国立公園の楽しみ方

シンクヴェトリル国立公園の楽しみ方

Kuna Yoon
執筆者: Kuna Yoon
認証済み現地在住者

緑が美しい夏のシンクヴェトリル国立公園

アイスランドの国立公園、シンクヴェトリル。この国立公園は、もしかしたら「ゴールデンサークル」「大陸の裂け目」「ギャウ」というキーワードでより広く知られているかもしれません。

シンクヴェトリル国立公園はアイスランドで人気のゴールデンサークルという、1日観光ルートの一か所になっています。Guide to Icelandのセルフドライブツアーでも、バス観光のゴールデンサークルツアーでも必ず訪れる場所です。

数々の絶景が国中に溢れるアイスランドですが、シンクヴェトリル国立公園はその中でも特に「知識」で楽しむ場所でしょう。美しく迫力のある景色も魅力ですが、シンクヴェトリル国立公園の見学では、歴史や地学の知識があると何倍も楽しめる場所です。

自然のインパクトが凄い!地球の割れ目、ギャウ

アルマンナギャゥは裂け目というより壁という表現が正しい

ギャゥとはアイスランド語で「地面の割れ目」と指す単語で、シンクヴェトリルの割れ目は正確にはアルマンナギャゥ(Almannagjá)と言います。英語ではギャゥという言葉よりもContinental Lift、または Valley between the mid atlantic ridgeなどと呼ばれることが多いです。この地球の割れ目は北米大陸プレートと、ヨーロッパ大陸プレートの境目であり、アイスランドはそのプレートの境目のちょうど真上にある形となります。日本語では大西洋中央海嶺というものですが、その名の通りこの境目の大部分は海の中にあり見ることはできません。ですがアイスランドでは、この境目部分が地上に表れておりそれを見て、触って体験することができる珍しい場所なんです。アイスランドの島の中央を貫いているので、実はシンクヴェトリル国立公園以外の場所でも、この裂け目は見ることができます。ただし、これほど豪快に裂けているのはここだけです。

アイスランドではこの裂け目は年に数センチづつ広がっているそうですが、海岸線も浸食により少しづつ減っていくので結果として国土が拡大することはないらしいです。日本も大陸プレートの境目にありますが、日本ではプレートがぶつかり合うアイスランドとは真逆の現象です。そのためどちらの国も地震頻発国なのですが、プレートの広がるアイスランドではその規模は小さく、日本では大規模になるようです。アイスランドでも稀に地震が発生しますが、人口密度が低いこともあり大きな被害が出ることは非常に稀です。

アイスランドという国はここでできた!民主議会発祥の地

この不思議な大陸の裂け目ですが、アイスランドの歴史と大きく関わる重要な場所です。ヴァイキングたちがアイスランドに定住を始めた当時、問題ごとの解決は各地の集落で行われいました。しかし人が増え問題が大きくなると、各エリアを超えたアイスランド全体での話し合いの場を設ける必要が生まれました。

こうしてアイスランド住人の意思で発足したのがアルシングと呼ばれるアイスランドの民主議会で、930年にこのアルマンナギャゥの近く、「法の壁」と呼ばれる場所で発足したといわれています。現在ではその正確な場所、実際に参加者が集まった場所というのは不明ですが、おおよそアルマンナギャゥの壁の前だと考えられており、現在では高々とアイスランド国旗が掲揚されています。

かつてのアルシンギ開催時のキャンプ跡地

そしてその隣にあるこの草の山が、どうやらかつてアルシングが開催された時に使われたであろう建物の跡なのだそうです。

夏に数週間開催されるアルシングは非常に重要な集まりで、様々な法の制定や問題の解決が行われました。それぞれの地域を代表する有力者が遠い道を馬に乗りシンクヴェトリルに向かいました。

そもそもシンクヴェトリルという名も、「議会の広場」というアイスランド語です。今では議会の様子は想像するしかありませんが、アイスランドの歴史を動かしてきた重要な地なのです。

ちなみに、ヴァイキングたちの国であったアイスランドもやがてはノルウェーやデンマークといった当時の大国の傘下に置かれます。完全にそれらの国の領地となったことはなく、言葉や文化も独自の発展を遂げましたが、経済や行政面においてはこれらの国により大きな制限が敷かれ、アイスランドの発展を妨げる要因ともなりました。アルシングは一時中断したり紆余曲折を経て、1844年にレイキャビクのダウンタウンへと移転しました。

かわいい4つの小さな家

このような歴史もあり、シンクヴェトリルの教会(シンクヴァトラキルキャ教会)の隣の建物には、国の重鎮が滞在した歴史があります。まずは別の場所にあったオリジナルの三角屋根の家。1907年、当時のデンマーク王、フレデリク8世が滞在し、「王様の家」と呼ばれるようになりました。その後この場所へ移転、悲しいことに1970年に火災があり当時のアイスランド首相ビャルニ・ベネディクツソンと、その妻、孫が亡くなってしまいました。火災後の再建時に、オリジナルの3棟の家から5棟に増やし、現在は4棟が首相府の管轄、1棟が公園管理局と牧師さんのために使われています。

散策は一周して、各地の説明も読みながら。

地質学的にも歴史的にも重要なシンクヴェトリル国立公園。散策には公園内の駐車場に車を停めて1~2時間ほど時間をかけて散策するのがお勧めです。各スポットは遊歩道で結ばれていて自然を楽しみながら散策できます。

アルマンナギャゥの大きな壁が目を引きますが、そのギャゥを流れ落ちるオクサルアゥラフォスの滝もお勧めです。小さな滝なので人の少ないタイミングを狙って訪れてみましょう。またこの滝の上流にある駐車場であれば駐車料金は無料です。ちょっと遠いですが、歩くことが億劫でない人はここからのスタートもお勧めです。

またP4の駐車場付近にあるペニンガギャゥもぜひ行ってみましょう。アルマンナギャゥの壁からは少し離れますが、ここでは透明度の高い水が流れていて、深い川底まで美しい水中の世界が見られます。シルフラの泉ではシュノーケリングができますが、地上から川をのぞき込むならペニンガギャゥが断然お勧めです。見過ごされがちなスポットですが、ぜひ水の中をのぞいてみましょう。青く透き通った川底には投げ込まれた硬貨がキラキラしています。

青い水が綺麗なペニンガギャゥ

アルマンナギャゥの壁を歩く道にも面白いストーリーがあります。公園の平野部分から、崖の上にあるビジターセンターを結ぶ坂道。現在はきれいに砂利道が整備されていますが、以前は何の変哲もない土の道だったそうです。それがある時、地面が陥没してしまいました。より新たに「橋」をかけ整備することになったのです。地震や地盤沈下によるものだということです。

かつて穴が開いてしまったアルマンナギャゥの道

トイレはインフォメーションセンターとビジターセンターの2か所にあります。ビジターセンターのほうは有料ですが綺麗です。どちらもカフェがあるので休憩を取りながらの散策もできます。

ぐるっと一周するとちょうどよいハイキングになりますのでお菓子や飲み物を持って出発しましょう。

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