日本人にとって未知の国アイスランド。その国で話されるアイスランド語なんていったら想像もできませんよね!一体どな言語なんでしょうか?

人口約33万人のアイスランドで話されているアイスランド語は、欧州でもマイナーで難しい言語と認識されています。北欧出身者でなければ、耳慣れない地名や人名に早くも辟易してしまうと思います。長く住んでいる外国人の中でも、何となくアイスランド語のシステムが解ってくる人もいれば、さじを投げてしまう人もいるようです。

ちなみにアイスランドの人名はとても変わっていて、なんと苗字がありません!ラストネームには父親の名前を使い「○○ソン(~の息子)/○○ドッティル(~の娘)」という名称を付けます。例えばグンナルという男性で、父親の名前がヨンならば、グンナル・ヨンソン。アンナという女性の場合は、アンナ・ヨンスドッティルとなります。夫婦間や親子間、そして兄妹間でもラストネームが違うことになる、とても珍しい慣習です。

ガイドさんの名前など、ファーストネームで気軽に読んでみましょう。くれぐれもMrやMsは付けないように!

Eyjafjallajökullの読み方

2010年にアイスランドのエイヤフィヤトラヨークットル火山(Eyjafjallajökull volcano)が噴火した際、噴煙の影響で欧米の国際線フライトが何日もストップしました。アイスランドという小国の火山がヨーロッパや北米の空に大きな被害を出したことも一因ですが、その発音の難しい火山の名前にも多くの関心が寄せられました。動画に見られるように、ニュースレポーターや観光客が一生懸命に火山の名前を言おうとする様子が話題になり、アイスランド国民は笑ってしまったものです。(失礼!)

アイスランド語は難しく見えますが、紐解いていけば理論的であり、面白い言語です。英語とも比較してみましょう。

アイスランド語のアルファベット

首をかしげさせるアイスランド語の発音

アイスランド語のアルファベットは以下の通り32文字あります。

Aa Áá Bb Dd Ðð Ee Éé Ff Gg Hh Ii Íí Jj Kk Ll Mm Nn Oo Óó Pp Rr Ss Tt Uu Úú Vv Xx Yy Ýý Ææ Öö

英語と違いC、Q、WとZがないのにお気づきでしょうか。また不思議な文字もありますね。母音は14種類、子音は18種類あります。アイスランド語の文章は見たままに発音していけば、何とかそれらしく聞こえます。英語のようにスペルと発音が一致しない、ということはありません。しかしアイスランド語独特のアルファベットや、英語と同じ発音をしないアルファベットもあります。便宜上カタカナ表記をしますが、実際の発音と完全に一致しない場合もあることをご了承下さい。

ÐはDに横線が入っていたり、ðは小文字のOに毛が生えたように見えますが、英語のTheyのようなTH発音の「ザジズゼゾ」です。

Hはそのまま読んで「ハヒフヘホ」のような発音です。ただしHとVが連なった時のみK発音の「ク」になります。例えばHvað(何?)は「クヴァズ」のような発音です。Hver(誰?)は「クヴェル」、Hvenær(いつ?)は「クヴェナイル」です。ダウンタウンにあるHverfisgataは「クヴェルフィスガタ」と読みます。

JはY発音の「ヤユヨ」と読まれます。例えばJójóと書いて「ヨーヨー」と読みます。それ故に名前に「ヤユヨ」が付く方は、十中八九、スペルミスされるので、氏名を正確に伝えたければ紙面やメールを使いましょう!さもなくば、ヤマダさんはJamadaと書かれたり、ヨシダさんはJoshidaと書かれてしまう事態が起こります。

声に出してみましょう!

Lは一つだけだと英語のL発音と同じです。しかしLが二つ重なると、舌を口の奥で鳴らすような、独特の発音になります。例えばJökull(氷河)は「ヨークットル」などと書かれますが、実際はカタカナ表記の通りには聞こえない音です。アイスランドに着いたら、ホテルスタッフやツアーガイドを捕まえて生の発音を聞いてみましょう!

Rは巻き舌です。「レイキャビク」の「レ」を巻き舌にするとぐっとローカルっぽくなります。 

アイスランド人はVをWのように発音する時もあります。なぜならアイスランド語にはWがないので、VとWの違いが分らない国民も多いからです。例えばVideoを「ウィディオ」のように発音してしまうことも。

ÞはPと見間違えやすいのですが、「パピプペポ」ではありません!英語のThing(物)を発音する時のTH発音のような摩擦音です。ゴールデンサークルの一つ、大地の割れ目シングヴェトリル(Þingvellir)にも使われていますが、間違っても「ピングヴェトリル」なんて言わないように!国外のキーボードにないアルファベットなので、THと書かれれることもあります。例えばアイスランド国外向けのメディアでは、シングヴェトリルはThingvellirのように綴られることも多いです。

Æは常に「アイ」と読みます。

Oは「オー」、Óは「オウ」、そしてÖは「ウ」に近い発音です。日本人には聞き分け難く、また発音し難い音なのですが、アイスランド人は明確に三つのOを使い分けています。しかし外国人がÓやÖを正確に発音できなくても、地元の方は解ってくれるのでご安心を。

AとUが重なると、オイという発音になります。レイキャビク市ダウンタウンのメインストリートLaugavegurは「ラウガヴェーグル」ではなく、「ロイガヴェーグル」。これはぜひ覚えておきましょう!ロイガヴェーグルを即座に言えれば、あなたもアイスランド通です。

アイスランド語の地名が長いワケ

アイスランドの道標

シンクヴェトリル(Þingvellir)やフィヤズラゥルグリューブル(Fjaðrárgljúfur) など、アイスランドの地図を広げただけでも長い単語が目に付きます。これはいくつかの単語を組み合わせた複合語が地名となっているケースが多いためです。

まず世界的に有名になったエイヤフィヤトラヨークットル火山。「エイヤ」は島、「フィヤトラ」は山、そして「ヨークットル」は氷河という意味です。島の山の氷河…ひとつの単語としての意味はともかく、こうやってアイスランド各地の地名は作られています。

シンクヴェトリルは「シンク」議会、「ヴェットリル」広場、という意味です。こうやって紐解いていくと、日本の地名ともちょっと似てませんか?漢字を組み合わせて新たな単語を作ったり、地名を表したり、共通する点もあるんです。

アイスランド南部にある小さな町キルキュバイヤルクロイストゥルの「キルキュ」は教会、「バイヤル」は町、「クロイストゥル」は修道院です。

絶景のヨークルスアウルグリューブル渓谷(Jökulsárgljúfur)の場合は、「ヨークル」は氷河、「アウル」は川、「グリューブル」は渓谷です。その名の通り、氷河からの水でできた川が渓谷を流れていきます。

東部の町エイイルススタージル(Egilsstaðir)は「エイイル(という人)の場所」という意味です。

どうですか?アイスランドの地図は情景を想像させる素敵な名前で溢れています。

英語も複合語が多数ありますが、三つ以上の単語が合わさった複合語は稀です。

ちなみに世界一長い町名はアイスランドではなくウェールズにあり、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochというのだそうです。大きな事件が起きたら、ニュースレポーター達はどうするのでしょうね!

アイスランド語と英語の関係

ゴールデンサークルにある噴出寸前のストロックル間欠泉

英語にはアイスランド語由来の単語が多々見られます。例えば、「ガイザー(Geyser)=間欠泉」や「サガ(Saga)=物語」など。

「ガイザー」はゲイシール(Geysir)と名付けられた間欠泉が語源です。ゴールデンサークルツアーで訪れることのできる間欠泉エリアにあります。

アイスランドで最も有名な「サガ」は1200年代に古語で書かれた壮大な散文物語集です。

英語のHusband(夫)という単語もアイスランド語と繋がりがある可能性があります。アイスランド語にHúsbóndi(一家の主/農家)という単語があり、意味も似ていると思いませんか?ちなみに現在のアイスランドで「夫」を指す単語はEiginmaðurで、Húsbóndiにおける「夫」という意味は薄れてしまいました。

何百年も前のバイキング時代に書かれた歴史書によると、昔のアイスランド人は、スカンジナビア人やイギリス人と難なく会話できたそうです。昔はこれらの人々とより共通点の多い言葉を話していたためです。

昔のアイスランドや北欧で話されていた言葉を古ノルド語と言います。アイスランド以外の国では近隣の言語に影響され大きく変わってしまいましたが、アイスランドは孤島で多文化との交流が限られていたため、古ノルド語の体系が最も強く残されています。

古英語もアイスランド語との類似点が見られます。古英語のYou(あなた)に当たる言葉はThou、ThyとTheeで、アイスランド語の「あなた」という意味のÞúと似ています。ちなみに英語のYouは比較的近代から使われ始めた単語です。

現在のアイスランド語で「あなた」という言い方はÞúしかなく、ドイツ語のSieやフランス語のVousのように、丁寧語や敬語として使える「あなた」という単語はありません。また、人々はファーストネームで呼び合い、ラストネームで呼び合うことはまずありません。日本語と比べたらかなりカジュアルです。

アイスランド語のEyja(島)という単語は、イギリス近辺の地名にも見られ、バイキングの足跡を覗わせています。例えばOrkney islands, や Jersey and Guernseyのように~eyという語尾がEyjaに由来しています。さらにイギリスのScafell Pike(スカフェル・パイク山)やCross Fell(クロス・フェル山)などの~fellは、アイスランド語で「山」を表すFjallが由来のようです。

Ship(船)はアイスランド語でSkip、Boat(ボート)はBátur、Fish(魚)はFiskurとなど、海に関する英単語の中にも、アイスランド語の影が見え隠れするものがあります。

このようにとっつきにくい言語ではあるけれど、一度勉強し始めてしまえば面白い発見がたくさんあるのもアイスランド語の特徴です。

古いけど新しいアイスランド語

アイスランドの児童書のタイトル

写真Amtsbókasafn

アイスランド語は何世紀もの間ほとんど変わっていません。ですが時代の移り変わりに伴い、新しい言葉が必要になります。そんな時、アイスランド人は外来語をそのまま使うのではなく、委員会に提案して新しい言葉を作るのです。生物学や化学などの分野でも、外来語をそのまま使うことはしません。委員会で作られた新しいアイスランド語がすんなり受け入れられる時もあれば、残念ながら人々に浸透しない時もあります。

元々ある単語は英語と似ているものがたくさんあります。例えばLand(土地)はアイスランド語でもLandですし、Wine(ワイン)はVín、House(ハウス)はHús、そしてGlass(グラス)はGlasです。特にここ半世紀で登場した単語はオリジナリティ溢れる単語でいっぱいです。

Tölva(コンピューター)は、「数」という意味のTalaと、「占い師」という意味のVölvaをくっつけたものです。直訳すれば「数値占い師」とでもなるでしょうか。

Sjónvarp(テレビ)という単語を分解すると、Sjón(視覚)とVarp(投影)となります。

Ísskápur(冷蔵庫)は「氷のクローゼット」、Frystikista(冷凍庫)は「凍った大きな箱」という意味です。日本語も似たような思考ですね。アイスランド語に愛着が湧いてきませんか?

この流れで、アイスランドではアニメキャラクターや映画の登場人物、タイトルまでもがアイスランド語になっています。日本でもSnow Whiteは白雪姫ですが、近年は英語の名前をカタカナで使うことが多くなりましたね。しかしアイスランドでは未だにアイスランド語風に改名することが盛んで、外国人には有名キャラクターでさえ「?」な名前になっています。

母国語への愛着

牛乳パックに書いてあるアイスランドの民話

写真MS

アイスランドにおける識字率は100%で、国民は母国語に並々ならぬ愛情を注いでいます。文学も盛んでアイスランド人は国民の5人に1人は本を執筆するという統計もあるほど。また毎年クリスマス前には大量の本が出版され、「クリスマス書籍の洪水(jólabókarflóð)」などと呼ばれたりします。

イースターには、イースターエッグの中に入れられた古い格言を読むのが習慣です。チョコレートで作られたイースターエッグで町は溢れますが、人々はチョコよりも中に入っている小さな紙切れを読むのに生きがいを感じています。

アイスランド国民は母語を正しく話すように気を遣い、そして多くの新語も難なく取り入れます。2013年から言語をテーマにした番組「スピーチ」(Orðbragð)が大ヒットとなり、母国語ブームの一端を担いました。

市販の牛乳パックにも新語が印刷されていることもあります。アイスランドのスーパーに立ち寄ったら探してみましょう!

アイスランド語を学んでみよう!

アイスランド語を勉強してみたい、話してみたくなりましたか?

確かにアイスランド語は、アイスランド以外の国でビジネスや旅行をするのには使えなさそうです。外国語を勉強するなら話者が多くて、利便性のあるメジャーな言語を選ぶのはもっともな話です。

しかし、アイスランドに興味のある方は、この機会にアイスランド語を学んでみてはいかがでしょうか?ネイティブレベルの語学力を目指す必要はありません。挨拶をアイスランド語でできるようになったら、アイスランドのカフェでローカル感溢れる交流も期待できそうです。アイスランドデザインやミュージック、文学に興味があるなら、アイスランド語を学ぶことで理解が一層深まるでしょう。


簡単なフレーズ

Halló 「ハロゥ」英語のハローと同じ気軽な挨拶

Hæ 「ハイ」英語のHi と同じ、気軽な挨拶

Bless 「ブレス」さようなら

Já 「ヤォ」Yes

Nei 「ネイ」 No

Góðan daginn 「ゴゥザンダイイン」おはようございます、こんにちは

Góða nótt 「ゴゥザノット」おやすみなさい

Skál 「スカゥル」乾杯!

Takk 「タック」ありがとう


本格的に勉強を始めると、教科書では細かい文法や、膨大な単語の活用法を目の当たりにしますが、ギブアップしないように!アイスランド語を話そうとする外国人を見るだけで、アイスランド人はとても喜んでくれます。

アイスランド人は息を飲み込むように話す特徴もありそれが真似できるようになれば、かなりこなれた感を醸し出せます。Yesを意味するヤォ。これを息を吸いながらヤォと言ってみましょう。そう!アイスランド人な感じが上手に出ていますよ!