火山の国アイスランド
火山の国アイスランド。現在でも温泉が湧き出たり、地熱活動が活発だったりと、火山はアイスランドの大きな特徴です。アイスランドにはいくつ火山があるの?どれくらいの頻度で噴火するの?旅行中に噴火することはある?火山があっても安全に旅行できるの?そんな疑問にこちらの記事でお答えします!
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アイスランドには休火山、活火山を含め130ほどの火山があります。北海道と四国を合わせたほどの小さな国ですが、アイスランドは大西洋中央海嶺の真上に位置しているため多くの火山が存在しています。そのため二つのプレートの上に位置するアイスランドには30を越える活火山システムがあります。噴火の予測は難しいものの、比較的定期的に発生しており、19世紀以降少なくとも10年に一度はアイスランドの火山が噴火しています。しかし、その間隔はランダムです。
皆様も覚えているでしょうか? 2010年にはエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull)火山が大噴火を起こし、ヨーロッパの航空網に多大な影響を及ぼしました。膨大な粉塵はフライトを不可能にするほどとなり、多くのフライトが長期にわたり欠航となってしまいました。フライトを控えていた人たちにとっては大きな迷惑でしたが、それでも過去の大きな噴火に比べれば、その被害状況は小さなものでした。(文字通り、エイヤフィヤトラヨークトル氷河の一部が吹き飛びましたが、氷山の一角、というよりは氷河の一角、と言ったところです)。この異常に長い名前からも有名になったエイヤフィヤトラヨークトル火山。ですがこの隣にあるカトラ(Katla)火山こそ過去に甚大な被害をもたらしてきた火山なんです。
最近では2014年8月から2015年3月まで噴火していたバルダルブンガ(Bardarbunga)にあるホルフロイン(Holuhraun)火山が有名でしょう。この火山はアイスランドの内陸部にあり、ヴァトナヨークトル(Vatnajökull)氷河の北側に位置します。エイヤフィヤットラヨークトル火山とは対照的に、噴煙などの被害は少なく、赤々と流れる溶岩を見に、多くの観光客が訪れた火山でもあります。人里離れた場所の火山でしたので、人的被害はありませんでした。
このように、人口密度の低いアイスランドでは、火山噴火が必ずしも膨大な人的被害を起こすことはありません。流れる溶岩による死者は出たことは珍しく(もしかしたらゼロかも)、被害のほとんどは噴火による噴煙や火山灰によるものです。では具体的にはどのような噴火があったのでしょうか。
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エイヤフィヤットラヨークトル火山
Picture by Ragnar Þ Sigurðsson
2010年に噴火したエイヤフィヤットラヨークトル火山(Eyjafjallajökull)、記憶にある人も少なくないのではないでしょうか。噴火により発生した膨大な粉塵はヨーロッパのフライトを不可能にするほどとなり、多くのフライトが長期にわたり欠航となってしまいました。フライトを控えていた人たちにとっては大きな迷惑でしたが、それでも過去の大きな噴火に比べれば、その被害状況は小さなものでした。文字通り、エイヤフィヤトラヨークトル氷河の一部が吹き飛びましたが、氷山の一角、というよりは氷河の一角、と言ったところです。この異常に長い名前からも有名になったエイヤフィヤトラヨークトル火山。ですがこの隣にあるカトラ(Katla)火山こそ過去に甚大な被害をもたらしてきた火山なんです。
エイヤフィヤットラヨークトル火山は920年に噴火が記録されて以降、数回噴火していますが、2010年の噴火が一番大きいものでした。それよりも1821年から23年の噴火は小さなスケールでしたが、やがて隣のカトラ火山の大爆発へと続きました。このようにカトラ火山の噴火はエイヤフィヤットラヨークトル火山の小さな噴火に続いて起こることが多いのですが、2010年はラッキーなことに、カトラ火山の噴火とはなりませんでした。
Picture by Ingólfur Bjargmundsson
エイヤフィヤットラヨークトル火山はフライトを欠航させた迷惑な火山として世界的に有名になりました。噴火初期には数百~千人ともいわれる数の人々が噴火を見に訪れたほどです。やがて噴火が規模を拡大し火山灰と溶岩が多くなり、このような見学をするには危険になってしまいました。
流れ出した溶岩は新たな山をふたつ作り出しました。それぞれ北欧神話のトールの息子の名前を取り、マグニとモゥジと呼ばれるようになりました。現在でもこの山は残っており、今ではハイキングをしに行くことができます。そしてその溶岩は今でも温かく、少し地面を掘るとパンを温めるくらいの熱を感じることができます。
エイヤフィヤットラヨークトル火山に登ることは難しいですが、南海岸からはその姿を見ることができます。
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スリーフヌカギグル火山
この火山、他とはちょっと違います! なんと、火山の火口内部に降りて行くことができるのです! このスリーフヌカギグル(Þríhnúkagígur)火山は、世界でたったひとつの内部を見学できる火山で、意外なことに首都レイキャビクの外れに位置しています。ダウンタウンからわずか35分ほどのドライブで着いてしまうんです。
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この火山のユニークなところは、かつてマグマが煮えたぎっていた火口がそのまま冷えて固まり、今に残っていることです。この火山は4000年間活動しており、近年は火山研究が行われてきました。数年前より安全が確認されたことから、一般に公開された火山で、ちょっとした研究者気分も味わえます。
地面にぽっかりあいた火口の穴はわずか4m四方、そこからはゴンドラがつり下げられており、巨大な洞窟の底へと降りて行きます。その高さなんと120m!底部分はサッカーのコートが入ってしまう程の大きさです。自由の女神像がすっぽり入ってしまうこの空間からはさらに地下200m付近まで延びる数々のトンネルが見つかっています。
この火口跡は地球上でも珍しく大きい火山現象だと言われています。そのサイズだけでなく、内部はカラフルに変色した岩で覆われており、その美しさにも目を奪われます。1974年に初めて内部の調査が行われ、2012年に初めて旅行者がその内部へと入りました。貴重な火山を守るべく、ツアーの参加人数は少数に限られています。火山や地質学好きにはたまらない場所ではないでしょうか。
グリムスヴォトン火山
アイスランドにある30の火山システムの中では、グリムスヴォトン(Grímsvötn)の火山システムが最も爆発性があると言われています。ヴァトンという言葉はアイスランド語で「水」や「湖」の意味があり、グリムスヴォトンはヴァトナヨークトルの氷河の下にある湖を指しており、その湖の下にある火山も同じ名前で呼ぶようになったそうです。この火山が噴火すると、上層にある氷河が溶け、湖の水と共に水蒸気爆発を起こします。その様子は上記のビデオで見ることができます。
グリムスヴォトンの火山システムは1783~1784年に最も壊滅的な規模の噴火を起こしました。グリムスヴォトンの火山システムの一部である、ラキクレーターでの噴火でした。この噴火の影響により約9350人(当時のアイスランドの全人口の4分の1)が犠牲となったそうです。アイスランドにいた家畜の半分も一斉に死んでしまい、結果的に全国規模の飢饉が発生しました。
この火山の噴火はアイスランドだけでなく世界各地にも被害を及ぼしました。北半球では二酸化硫黄といったガスが広がり、深刻な大気汚染が起こり、ヨーロッパ全土で農作物の不作となりました。グリムスヴォトンの火山噴火が原因で亡くなった人の数は全世界で600万人以上にもなると言われています。
カトラ火山
カトラ(Katla)火山はアイスランドで最も危険だといわれている火山のひとつで「地獄への入り口」と呼ばれることもあります。アイスランド南部のミルダルスヨークトル氷河(Myldarsjokull)にあるこの火山は、噴火時に氷河を溶かし、大規模な洪水を発生させます。この洪水により家や農場が壊滅的な被害を被ることがあるのです。
カトラ火山はアイスランドでも最も大きい火山のひとつで、930年から1918年の間に20回噴火しています。それぞれの噴火の間の期間は13年から95年です。
最後の噴火は1918年でしたが、火山研究者たちは近い将来にまた噴火があるだろうと予測しています。そして歴史が告げるには、その噴火は巨大なものかもしれません!
洪水を引き起こすカトラ火山ですが、934年に起きた割れ目噴火では、過去1万年で最大の量の溶岩を噴出させた大きな噴火となりました。
アイスランドを一周するリングロードが1974年に建設されるまで、アイスランドの人々は南部に広がる平野を旅することを恐れていました。カトラ火山がすぐそばにあるこの場所では、突発的な洪水が多く、増水した川を渡ることは困難だったからです。1918年の噴火によって引き起こされた洪水は特に危険なものでした。
カトラ火山へのアクセスは限られており、ハイキングで行くか、ヘリコプターで向うしかありません。レイキャビクからリングロードで南に2時間半、スコゥガフォス(Skógafoss)に到着します。ここスコゥガフォスからソゥルスモルク(Þórsmörk)までのハイキングルート、フィムヴォルズハゥルス(Fimmvörðuháls)のルートを歩けば、途中でカトラ火山の姿を望むことができます。
スナイフェルスネスヨークトル氷河/火山
写真 Hótel Búðir
スナイフェルスネスヨークトル(Snæfellsjökull)は、一般的には氷河と呼ばれていますが、その氷の下には火山があります。山であり、火山であり、その上には氷河を冠したスナイフェルスネスヨークトル。天気のいい時にはレイキャビクから海の向こうに見えることもあります。富士山同様に成層火山であるこの火山は、頂上に白い氷河を冠した姿が美しい火山です。この火山が有名になったのは、その噴火の被害のためではなく、フランス人作家ジュール・ヴェルヌの書いた冒険小説「地底探検」の舞台となったためです。
この火山の最後の噴火は西暦200年(前後150年)だと言われています。海まで達するほど広大な溶岩の大地で覆われた一帯は、国立公園に指定されています。残念ながら温暖化の影響でこの山頂の氷河は数年後には消滅してしまうだろうと言われています。2012年には、初めて頂上の氷がすべて溶けてなくなりました。
レイキャビクからでも晴れて天気のいい日には、海の向こうにそびえるスナイフェルネスヨークトル氷河を見ることができます。
アスキャ火山
アスキャ(Askja)火山はヘクラやカトラ火山同様に巨大な爆発を起こす火山です。どういう訳かアスキャはアイスランド語で「箱」というような意味がありますが、その名前も決して間違ってるとは言えません。アスキャ火山の火口跡には水が溜まり、大きな器のようになっています。
今でこそ有名なアスキャ火山ですが、1875年に大規模な噴火を起こすまでは殆ど知られていませんでした。この噴火によって発生した灰は膨大で有毒でもあり、特にアイスランド東部の家畜の多くが死に絶えました。火山灰はスウェーデンやノルウェーでも見られ、この火山の被害は多くのアイスランド人がアメリカやカナダへと移住するきっかけとなりました。
1875年の噴火で形成された火口湖は、もともともは火山の熱で熱いお湯でしたが、時が経つにつれ水温が下がり、今では冬には凍り付くほどになりました。アスキャ火山の火口よりは小さいですが、ヴィティ(Viti)と呼ばれる火口湖の水は温かく入浴することもできます。詳しくはアイスランドの温泉 トップ5をどうぞ。
アクセスは難しく、アークレイリやミーヴァトン湖から専用のツアーに参加する必要があります。
写真 Askja Super Jeep Tour from Akureyri
1907年、ドイツ人研究者数人がアスキャ火山の火口の調査に訪れました。小さなボートに乗って火口湖を調査していましたが、彼らは跡形もなく消え去ってしまったのです。一年後、研究者の婚約者が捜索隊を依頼しますが、研究者たちの姿は見つかりませんでした。現在に至るまで彼らの痕跡は何も発見されていません。この火口湖は深さ220mで12㎢の広さがあります。
最近では1961年の噴火を最後に、この火山は沈黙を保っています。
アイスランドの火山ツーリズム
今みなさんはアイスランドの危険な火山について読み終わりましたが、この氷と火の国を旅することを止めましょう、ということではありませんよ。アイスランドの火山ツーリズムは以前からありましたが、2010年のエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull)火山の噴火を皮切りに、より多くの人が火口を訪れるようになりました。ハイキングや、運転していったり、スノーモービルや観光飛行などその方法は様々です。噴火している間、怪我人は出ず、訪れた人々は自然の力を目の当たりにすることができました。
アイスランドの自然についてもっと知りたい人はアイスランドの氷河もどうぞ。ゴールデンサークルツアー、リングロードについてもチェックしてみましょう。
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