アイスランドは「火と氷の国」と呼ばれており、国全体に多くの氷河と火山 が存在しています。小さな島国ですが、北極に近い緯度のため、数々の氷河があるアイスランド。その存在はアイスランドの風景を特徴づけるものです。



氷河は、消えてなくなることの無い大きな氷の塊です。地表の雪が長い間解けることなく堆積し、氷に変化するとそれは氷河となります。長い時間、時には何世紀もかけて、雪が圧縮され、厚い氷の塊に変わります。

氷河の意外な特徴は、移動しているという点です。氷自体の重さによって、非常にゆっくりと流れる川のように移動します。氷河は永続的なものですが、移動するに従ってゆっくりと形を変え、クレバスや割れ目を作り、ときには美しい氷河洞窟が形成されます。

冬の間だけ入っても安全な氷の洞窟

アイスランドでは、活火山の上に数多くの火山や氷河が形成されています。火山が噴火するとき、その上の氷河の氷は急速に解け、ヨークルフロイプ(jökulhlaup) と呼ばれる壊滅的な威力を持つ洪水を発生させます。火山の噴火による直接的な被害が小さくても、この大規模な洪水により橋や道路が寸断され大きな被害を被ることがあります。

アイスランドの氷河 早わかり

  • アイスランドの国土の約11%は氷河で覆われています。
  • 大きい順にヴァトナヨークトル氷河、ラングヨークトル氷河、ホフスヨークトル氷河、ミルダルスヨークル氷河と続きます。
  • ヨークトル(jökull)はアイスランド語で氷河という意味です。
  • アイスランド各地にある氷河ですが、アクセスのしやすさには大きな差があります。ソゥルヘイマヨークトルは氷河の末端の駐車場まで車で行くことが可能です。
  • 氷河の下に火山があることがあり、氷河の名前がそのまま火山の名前となることもあります。

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ヴァトナヨークトル氷河 Vatnajökull

迫力あるヴァトナヨークトル氷河の風景

ヴァトナヨークトル氷河 はアイスランドだけでなく、ヨーロッパでも最大の氷河です。ヴァトナヨークトル 氷河はアイスランドの南東部にあります。非常な大きな氷河で、その末端からは、溢流氷河または流出氷河と呼ばれる小さな氷河が各方角に手足のように伸び、それぞれに個別の氷河名が付けられています。そのため、地図上では同じ氷河であっても、部分により違う名前で呼ばれることがあります。

2014年8月に噴火したホルフロイン火山

ヴァトナヨークトル氷河の溢流氷河で最も有名なのは オーライヴァヨークトル (Öræfajökull) 氷河でしょう。アイスランドの最高峰、クヴァンナダルスフニュークル(Hvannadalshnjúkur)の山がここにあることから、多くの人がこの氷河を通ります。 また、氷河の下には火山が隠れていることもあります。アイスランドで最も活発な火山系である, グリムスヴォトン(Grímsvötn)も、ヴァトナヨークトル (Vatnajökull) にあり、最近では 2014年8月から翌年3月までバウルザルブンガ (Bárðarbunga) のホルフロン (Holuhraun) で噴火がありました。

ヨークルスアゥルロゥン氷河湖

ヴァトナヨークトル氷河の南東側には、 美しいヨークルスアゥルロゥン (Jökulsárlón) 氷河湖 があり、氷河のかけらが湖に浮いています。その異世界のような風景はアイスランドで一番美しい風景とも言われるほどです。このヴァトナヨークトル氷河全体と周辺のエリアを含むヴァトナヨークトル国立公園は12,000 km2と、ヨーロッパ最大の国立公園の大きさを誇ります。

透き通る氷が美しい洞窟の内部

また、ヴァトナヨークトル氷河が注目を浴びる理由のひとつとして氷の洞窟があります。ヴァトナヨークトル氷河に形成されることが多く、毎年秋になると専門のガイドが洞窟を探しに行きます。気温が高くなると溶けたり崩壊してしまう、氷河の洞窟は冬のみ見ることのできる自然現象です。

スカフタフェトルのスヴァルティフォスの滝

また氷河の麓に広がる自然保護区、スカフタフェトルは緑豊かなエリアでハイキングを楽しむ人で夏は大賑わいとなります。ハットルグリムス教会のデザインのモチーフとなったスヴァルティフォスの滝への登山道もあります。

このように巨大なヴァトナヨークトル氷河を取り巻く風景は多種多様です。大きな氷河だからこそ、その周辺には表情豊かな景色が広がっています。



ラングヨークトル氷河 Langjökull

山の上を覆うラングヨークトル氷河

Photo from: Helicopter Tour | The Golden Circle & Touchdown on Langjökull

ラングヨークトル氷河 はアイスランドで 2 番目に大きな氷河です。アイスランド語で「長い氷河」を意味するこの氷河、名前の通り細長い形をしています。レイキャビクの北東方面、ゴールデンサークルのそばにあり、グトルフォスの滝からその姿を望むことができます。

ラングヨークトル氷河でのスノーモービル

Photo from: Snowmobile Tour & The Ice Tunnel 

ゴールデンサークルに近いことから、スノーモービルとバスでのゴールデンサークル観光がセットになったツアーもあります。もちろん、レンタカーを借りている場合でも、グトルフォスの滝に集合してスノーモービルツアーに参加することもできます。スノーモービルに乗ってラングヨークトル氷河の上を走り抜けるのは爽快です。夏の晴れた日に、氷河の上を駆け抜けるのも貴重な経験ではないでしょうか。

A natural crack that can be seen inside the man-made ice tunnels in Langjökull glacier

また、2015年にはラングヨークトル氷河に人口の洞窟が掘られました。洞窟というよりトンネルのようになっているこのアトラクション。一年中訪れることができ、氷河を内部から観察することができる、ちょっと変わった空間です。チャペルもあり、結婚式を挙げることもできます。



ホーフスヨークトル氷河 Hofsjökull

Highland views close to Hofsjökull glacier

Photo from: South Coast & Highlands | Kjölur & the Golden Circle

ホーフスヨークトル氷河 はアイスランドで 3 番目に大きな氷河です。アイスランドの真ん中にある氷河で、その周囲はハイランドと呼ばれる高原地帯になっています。ホーフスヨークトル氷河は火山でもあり、カルデラに囲まれたアイスランド最大の活火山は、、アイスランド最長の川であるショウルスアゥ(Þjórsá)川など、さまざまな河川の水源となっています。ホーフスヨークトル氷河とラウングヨークトル氷河の間にはキョルル(Kjölur)と呼ばれる山岳道路があります。アイスランドの南北をつっきる形で走っていますが、実際は舗装や整備がされておらず、通行は夏のみ可能。ハイランドでアウトドアを楽しむ人たちに利用されています。

ミルダルスヨークトル氷河&エイヤフィヤトラヨークトル氷河 Mýrdalsjökull &Eyjafjallajökull

ミルダルスヨークトル氷河 はアイスランドで 4 番目に大きな氷河で、その隣には6 番目に大きな エイヤフィヤトラヨークトル氷河があります。この 2 つの氷河はアイスランド南部にあり、南海岸を旅している時に見ることができる氷河です。エイヤフィヤットラヨークトル氷河は、その下に火山を擁しており、2010年の大噴火の際にヨーロッパの空の交通網を麻痺させたことで有名になりました。ですが、隣のミルダルスヨークトル氷河の方が大きく、そこにはカトラ (Katla)火山 という、アイスランドで最も大きく活発な火山が眠っています。

2つの氷河火山の間には、 フィムヴォルズハウルス (Fimmvörðuháls) というハイキングルートがあり、国内外から多くの登山客が訪れます。ルート上には噴火によって新しく形成された場所があり、温かい地面を触って確かめることができます。

ソゥルヘイマヨークトル氷河 Sólheimajökull

Glacier hiking on Sólheimajökull glacier

Photo credit: Sólheimajökull Glacier Expedition

また、ミルダルスヨークトル氷河には、ソゥルヘイマヨークトル(Solheimajokull)という溢流氷河があります。ここは南海岸を通る国道1号線からもアクセスが良く、レイキャビクからも2時間半ほどで、氷河ハイキングやアイスクライミングが盛んに行われています。



ドラゥンガヨークトル氷河 Drangajökull

ドランガヨークトル氷河、写真 AgainErick from Wikimedia Commons

ドラゥンガヨークトル 氷河 はアイスランドで 5 番目に大きな氷河で、西部フィヨルド (Westfjords) にあります。過去数年間で縮小が確認されていないアイスランドで唯一の氷河であり、氷河全体が標高 1,000m以下の場所にある唯一の氷河でもあります。

スナイフェルスヨークトル氷河  Snæfellsjökull

スナイフェルスヨークトル氷河、写真 Juhászlegeny from Wikimedia Commons

スナイフェルスヨークトル氷河はアイスランドで13番目の大きさと、決して大きな氷河ではありません。さらに残念なことに、温暖化の影響で氷河は縮小の一途をたどっています。2012年8月には、記録を初めて以来初めて、山頂の氷が一時的に全てなくなりました。それにもかかわらず、スナイフェルスヨークトル氷河はアイスランドでも良く知られた氷河のひとつです。この氷河はスナイフェルス(Snæfellsnes)半島の先端にあり火山でもある山の頂上部分を覆っています。晴れた日にはレイキャビクの面するファクサフロゥイ湾の向こうに浮かび上がるシルエット。天気が良ければ、氷河を冠した美しい山の姿が見えるはずです。

ブージルから見たスナイフェルスヨークトル氷河の遠望

小さな氷河ですが、その氷河と麓一帯は、アイスランドに3つある国立公園のひとつに指定されています。アイスランドの他の氷河と同じように、スナイフェルスヨークトル氷河にも火山がありますが、富士山同様の円錐形の成層火山で、その美しい姿が人気です。ジュール ベルヌの『地底旅行』という小説では、地球の中心へ向かう際の入り口として描写されたことから、その名が不朽のものとなりました。

このスナイフェルスネスヨークトルがある、スナイフェルネス半島。レイキャビクの北側に位置し、日帰りツアーや1泊2日のツアーが多く催行されています。他のアクセスの良いエリアに比べ観光客が少なく、ゆったりと自然を味わうことができるのも魅力のひとつです。