アイスランドの中央高原地帯、ハイランドの必訪スポット5選

アイスランドの中央高原地帯、ハイランドの必訪スポット5選

Magnús Ólafsson
執筆者: Magnús Ólafsson
認証済みスペシャリスト

見渡す限りの山々には誰も住んでいない

アイスランドの内陸部、実は人っ子一人住んでいない場所なんです!ハイランドと呼ばれる場所ですが、一体どんな場所なのでしょうか。

アイスランドのハイランドは4万k㎡あり、ヨーロッパでは、最も広大な無人地帯のひとつです。中央高原地帯と称されることもある通り、多くの山々が連なり、氷河や渓谷、地熱活動の活発なエリアが多くあります。冬には厳しい天気に見舞われ積雪量も多く、人の立ち入りはできません。

厳密なハイランドのエリアの境界線はありませんが、道路がFロード(後述)に変わる辺り、もっと大雑把には、国道1号線(リングロード)の内側だと思えば大丈夫でしょう。ゴールデンサークルはハイランドではないのでご心配なく!

流紋岩の山々  ハイランドの春

火山活動も活発なハイランドはパワフルなエネルギーで満ちています。マグマにより新しい土地が作られ、大陸プレートを境に古い土地は東西へと押し出されていきます。荒涼とした大地は、若くて粗削りなアイスランドの姿でもあります。

ハイランドへのアクセス

ハイランドは厳しい気候のため、冬は閉鎖され、毎年6月から7月にFロードと言われる道が開通します。積雪や天気により毎年開通日は変わりますので、道路状況を確認してください。

F208などと記されたFロードという道は、整備のされていない砂利道で、4WDのみ通行できます。(2輪駆動車での通行は違法です。)山小屋はありますが、数は少なく多くの人はキャンプをして過ごします。4WDであればレンタカーでも訪れるのは違法ではありませんが渡河などリスクが大きいですのでツアーに参加するのがお勧めです。レンタカーで周遊する場合は、沿岸部の町からバスに乗車できる可能性もあるので、問い合わせてみましょう。

ここからは、ハイランドのお勧め Top 5を紹介します。

5. ソゥルスモルク

3つの氷河に囲まれたソゥルモルク(Þórsmörk)。エイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull、ミールダルスヨークトル(Mýrdalsjökulとティンダフィヤトラヨークトル(Tindafjallajökullがに三方を囲まれた自然保護区は、アイスランド語で北欧の神、トールの森という意味で、水の豊かな渓谷です。

コケ、シダやカバノキの生い茂る緑豊かな景色がある一方、黒い砂が堆積した扇状地には乳白色の川がながれています。この不思議な風景がアイスランドで人気のあるハイランドのひとつです。

トールの谷、ソゥルスモルク コントラストの面白いソゥルモルク。写真: Iurie Belegurschi.

ソゥルスモルクの空と大地を隔てるのは、ごつごつとした山の尾根。雪渓や根雪も残る尾根には薄い雲がかかり、ベールのようです。ソゥルモルクの渓谷を昇ってきた温かい空気は、ハイランドの氷河からの冷たい空気とぶつかり雲を発生させます。ちょうど尾根付近にできるこの雲は、山頂の姿を人間から隠しているかのようです。

このちょっとミステリアスなソゥルモルクには、数えきれないほどの洞窟や小さな渓谷があり、ハイキングコースも豊富にあります。

201年の噴火後のフィムヴォルズハゥルス  フィムヴォルズハゥルスはまさに冒険

その中で有名なのが、全長30kmにも及ぶフィムヴォルズハゥルス(Fimmvorduhals)のトレッキングルートです。まずエイヤフィヤトラヨークトル火山の下の険しい山道を通ります。そして、フィムヴォルズハゥルス山頂を越えますが、その際に、2010年の噴火の跡を見ることができます。

また、アイスランドで一番有名なハイキングコースは全長55kmのロイガヴェーグル(Laugavegur)です。レイキャビクのショッピングストリートと同じ名前ですが、こちらはソゥルスモルクからランドマンナロイガルまでのユニークな景色が楽しめます。

 

この動画では渡河の様子も撮影されていて、ワイルドなアイスランドが収録されています。



4. ランドマンナロイガル

ランドマンナロイガルの特徴は、太陽の動きに合わせて鮮やかな色が絶えず変化する流紋岩の山々です。木や草の生えていない山々は、火山活動によって地面の色が紫や赤、茶色などに変色しています。地熱活動が活発な溶岩原、ロイガフルン(Laugahraun)の端に位置していて、もうもうと立ち込める煙も、独特な風景を作り出しています。

草木が無いのにカラフルなランドマンナロイガル  流紋岩が美しいランドマンナロイガル

ランドマンナロイガルのツアーでは、空色の水が不思議な湖、リョゥティポットゥルル(Ljótipollur)、そして熱い蒸気が噴出したり硫黄の鉱床があるブレンニステインスアルダ(Brennisteinsalda)を訪れます。青い山という名のブラゥフニュゥクル(Bláhnúkur)に登りランドマンナロイガル全体を見渡してみましょう。日本では見ることのない異世界の景色と出会うことができます。

ランドマンナロイガルの秘湯ランドマンナロイガルに湧き出る温泉。写真: Landmannalaugar Super Jeep Tour

そしてハイキングの終わりにはランドマンナロイガルの天然温泉へ。不思議な山々に囲まれた温泉はまさに秘湯。何世紀にも渡り、このお湯で旅人たちは疲れた体を労り過酷な旅を続けたのです。

ランドマンナロイガルは冬にも冒険好きなアイスランド人によってツアーが催行されています。改造されたタフなジープに乗って、雪の中を山の奥へと進むツアーです。手軽に大冒険を体験できます。



3. ヘクラ火山

ヘクラ(Hekla)はランドマンナロイガルから30km西にあり、世界で最も活発な火山の一つです。

ヴァイキング達がアイスランドに定住を開始してから20回以上大規模な噴火をし、世界のどの活火山よりも多量の溶岩原を生成しています。また、様々な自然現象の中では、アイスランドの神話や伝説に一番多く登場しています。

雪を冠したヘクラ火山Hekla標高1500mのヘクラ火山。穏やかな姿とは裏腹に、噴火すれば大きな被害が発生する。

記録に残る一番古い噴火は1104年です。爆発的な噴火を起こしたヘクラ火山は、その威力のために、邪悪な存在や黒魔術、ついには地獄や悪魔とまで結び付けて考えられるようになり、それはアイスランドだけでなくヨーロッパにも広まりました。

多くの修道士、神父など聖職者たちは、ヘクラはこの世の煉獄の出現であるという様々な理論を唱えました。犯罪者、姦淫を犯した者、溺死した女性や無信仰者の魂が、悪魔の背中に乗せられてヘクラの頂上まで運ばれると、そこで悪魔が賛美歌を唱え、氷と雪の上で犯罪者を拷問にかけ、火の中で苦しめ、再び雪の中で拷問にかける。こうして、犯罪者は永遠に煉獄と氷を行き来し、苦しみ続けるのでした。

1585年の地図に書かれた噴火するヘクラ火山1585年の地図には、ヘクラがの噴火により爆発音とともに石が降り注ぐ、と書いてある。 

フラータエイの本(Flatey Book)にると、1341年の噴火の際、人々は火山の噴火口に鳥の形をした魂が群がって入っていくのを見たと主張しました。そして16世紀半ばには、ドイツの学者で医師であったキャスパー・ポイツァー(Caspar Peucer)が、この「ヘクラの底なしの深淵」以外に地球上に地獄の門は存在しないと主張しました。

19世紀後半までは、ヘクラに地獄への門があるというのが一般的な考えでした。しかし現在では、地獄の門を怖がる群衆はおらず、その勇壮な姿を楽しむ旅行者たちが訪れています。

なだらかなヘクラ火山の稜線を楽しむ人々夏のヘクラ火山。 写真: Börkur Sigurbjörnsson, Wikimedia Creative Commons.

ヘクラの頂上まで辿り着くには徒歩で3〜4時間、冬にはスノーモービルツアーに参加すれば簡単に山頂までたどり着くことができます。またランドマンナロイガルのバスでもアクセスでき、ヘクラ・レイルバッキ・ビジター・センター(Hekla Leirubakki Visitor's Center)ではキャンプをしたりすることができます。

ヘクラは1970年から約10年毎に噴火しており、最後に噴火したのは2000年2月末です。しかし、ヘクラ火山へのツアーは危険でなく、火山学者たちはヘクラ火山周辺の火山活動を監視しています。火山活動のわずかな兆候が見えた場合にはすぐに警告が発せられ立ち入り禁止となります。



2. キェルトリンガルフィヨットル

ハイランドの中央部にある、キェルトリンガルフィヨットル(Kerlingarfjöl)の山脈。夏には4WD車をでランドマンナロイガルからキョルル(Kjölur)の砂漠を通り、ケットリンガルフィヨットルを訪れることができます。女トロールの山という名前ですが、一体どんな場所なのでしょうか?

女トロールの山、ケットリンガルフィヨットル ケットリンガルフィヨットルの夏。写真: Krator, Wikimedia Creative Commons. 

ホフスヨークトル氷河(Hofsjökull)とラングヨークトル氷河(Langjökull)の間にあり、その周辺は険しい火山地帯、氷河、活発な地熱地帯、流紋岩ドームや古代のカルデラなどの様々な不思議な風景に囲まれています。

南北アイスランドを結ぶキョルル・ロードが近くにあったにもかかわらず、何世紀にも渡って、ケットリンガルフィヨットル遠すぎてアクセスが悪く、訪れる人はほとんどいませんでした。

転機が訪れたのは20世紀半ばです。この地域は夏のスキーリゾートとして発展し、アイスランド人は氷河と残雪の上でスキーを楽しみました。

しかし2000年の夏には、気温の上昇のため、山の斜面の冬の雪と氷はほとんど全部溶けていました。今ではスキーではなく、ハイキングを楽しむ人や、日常では味わえない自然を求める人で賑わっています。キェルトリンガルフィヨットル・ハイランド・リゾート(Kerlingarfjöll Highland Resort)では山小屋や食事などのサービスを提供しています。



1.クヴェラダリル

鮮やかな山肌と温泉が有名なクヴェーラダーリル温められた水がたまったクヴェーラダーリル。写真: day Camping 4x4 Self Drive Tour

キェルトリンガルフィヨットルからわずか5kmのエリアにクヴェラダリル(Hveradalir)の地熱地帯があります。クヴェラダリルは色んなハイキングコースをがある温泉の谷で何日も周辺エリアを冒険することができます。キェルトリンガルフィヨットルからクヴェラダリルを往復する1日ハイキングコースは特におすすめです。

Hveradalir ('The Valleys of Hot Springs) rank amongst Iceland's largest geothermal areas.クヴェーラダーリルの氷河と蒸気。 写真:Laurent Deschodt, Wikimedia Creative Commons.

火山の力と氷河の力がせめぎあうクヴェラダリルは、アイスランドの最も大きな地熱地帯の1つです。クヴェラダリルへのハイキングでは、山肌を降下する氷河と、その力に負けまいとする小さな寒帯植物の姿をみることができます。

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