シンクヴェトリル国立公園は、3つの国立公園の中でも特に人気がある

アイスランドには3つの国立公園があります。シングヴェトリル国立公園、スナイフェルスヨークトル国立公園、そしてヴァトナヨークトル国立公園です。

一般に、国立公園や自然保護区とは、美しい自然や文化遺産が存在し、その保存が重要だと考えられている場所です。人口の多い日本では、国立公園と言うと人里離れた場所にある豊かな自然、動植物が見られる場所というイメージがあります。しかしアイスランドは国土の殆どは人間の住んでいない大自然。手つかずの美しい自然は当然のように見ることができます。

実際、国立公園とそうでない場所の境目には柵などなく、どこまでも限りない大自然が続いているのみ。では、どうやって国立公園を訪れたり楽しんだりすればよいのでしょうか。

スナイフェルス氷河とルピナスの花畑

入場料と営業時間

前述のとおり、アイスランドの国立公園は柵で囲まれているわけではありませんし、またエントランスがあるわけでもありません。環境整備への投資のために、入場料を取るべきがという議論はありますが、今のところそれぞれの国立公園を訪れる際の入場料はありません。

ただし、施設料使用料として、トイレ使用料や駐車場料金を払うことがあります。

国立公園の区域に入ることについての営業時間の制限はありません。夏であれば白夜なので真夜中に訪れることもできます。ただし、区域内のレストランやビジターセンターは24時間営業ではないので、日中以外に訪れる場合には確認しましょう。

国立公園内の散策の仕方

シンクヴェトリル国立公園は、徒歩で散策(ハイキング)ができるように地図やハイキングルートが整備されています。駐車場も数か所にあり、一番散策しやすい国立公園です。

ほかの2か所は、公園内を走る道路沿いに観光をします。少しづつ車を走らせ、少しづつ観光スポットを見学する形になります。ビジターセンターの周りに遊歩道が張り巡らせている…という感じではありません。

国立公園内の宿泊施設

国立公園内の宿泊施設は限られており、ほとんどはキャンプ場です。またキャンプの際も、指定の場所以外でのキャンプは禁止です。現実的には国立公園のそばのホテルやゲストハウスに泊まることになるでしょう。

ですが前述の通り、どこまでも続く大自然。国立公園の外でも十分な景観を楽しめます。

注意事項

ごみのポイ捨てや、植物の採取はもちろん禁止です。また、アイスランドの草木・苔は成長に長い年月を要します。指定の遊歩道以外の場所を歩いたり、道を外れて写真撮影などをすることはやめましょう。

ドローンの撮影は禁止されていることがありますが、ルールは変わっていきますのでその都度確認することをお勧めします。


ここからは、それぞれの国立公園について紹介します。

シンクヴェトリル国立公園 Þingvellir National Park

Almannagjá, the North American tectonic plate, during the wintertime.

シングヴェトリル国立公園は、アイスランドの国立公園のうち、唯一ユネスコの世界遺産に登録されています。レイキャビクに近いアイスランドの南部にあり、ゴールデンサークルのルートで訪れる場所の1つです。その面積は約240㎢にもなります。

日本では、シングヴェトリル、アルマンナ・ギャオ、大陸の裂け目、ギャォなど、様々なキーワードで紹介されることもありますね。

アイスランドの議会、アルシンギ(Alþingi)は、930年に設立され、1798年までこのシングヴェトリルにありました。シングヴェトリル国立公園は議会の遺跡を保護するために1930年に設立されたアイスランド初の国立公園です。歴史的価値を背景に国立公園となりましたが、後に周囲の自然を保護するためにエリアが拡張されました。

シンクヴァトラヴァトン湖

Wikimedia. Creative Commons. Credit: Nojhan.

レイキャビクから36号線を通り、シンクヴェトリル国立公園に向かう道に突如現れる巨大な湖があります。シンクヴァトラヴァトン湖(Þingvallavatn)という湖で、シンクヴェトリル国立公園のすぐ隣に位置しています。

この湖に流れこむのがシルフラ(Silfra)というスキューバダイビングやシュノーケリングができるアイスランドの最も有名な場所。水は透明度が非常に高く、水中で90〜120mの視界があります。

シンクヴェトリル国立公園にあるシルフラの泉

シンクヴェトリル国立公園への入り口はユーラシア大陸プレートと北アメリカ大陸プレートが出会う大西洋中央海嶺の地溝帯に位置しています。

歴史的価値とともに、美しい自然や海嶺の露出など多角的な価値のあるシンクヴェトリル国立公園

大西洋中央海嶺は、その名の通り殆どの部分は海の中です。アイスランドのシンクヴェトリルではその海嶺が地上で観察できる数少ない場所の1つです。この境目のことを、ギャオ、アルマンナ・ギャォ(Almannagjá)と呼びます。

7㎞以上続く、アルマンナ・ギャォ

Credit: Mitchel Jones.

アイスランドの歴史と、シンクヴェトリル

シンクヴェトリル国立公園で忘れてはいけないのが、その歴史です。ヴァイキングたちがスカンジナビア半島からアイスランドへ移住、アイスランド各地に居住地を作ると、やがて島全体で物事を決める必要がでてきました。

「アルシンギの様子」作者: W. G. Collingwood

Wikimedia. Creative Commons. Credit: Maksim.

その話し合い、議会がシンクヴェトリルで開かれるようになったのです。大陸プレートの大きな崖を背後にスピーチをすると、音が反響し耳を傾ける聴衆によく聞こえるようになったといいます。

上の絵は、当時の野営の様子を描いたものです。車や飛行機などの移動手段は当然ありませんから、徒歩や馬の背に乗ってアイスランド各地から人は集まってきました。そして議会が開催される夏の間、一時的なシェルターを作り過ごしていたのです。

この議会、アルシンギでは様々な決定がなされ、1000年には、北欧の神々への信仰を廃し、キリスト教への改宗が決定しました。やがてヴァイキングたちの時代は終わり、スカンジナビア半島の王政への従属の時代が訪れます。この時代にはアルシンギ議会は形骸化したこともありましたが、アイスランド独立に向け徐々に力を強いものにしていきました。

1944年6月17日、アイスランドはついにシンクヴェトリルでアイスランド国憲法を発効、独立国家となりました。

シンクヴェトリル国立公園にあるオクサルアゥルフォスの滝

アルマンナギャォの大きな崖に隠れた、ひっそりとたたずむ滝があります。オクサルアゥルフォス( Öxarárfoss)という滝で、アイスランド語で「斧の滝」という意味があります。

アルシンギ議会で処刑が決定した罪人たちを処刑したのでこの名前が付いたという説がありますが、定かではありません。滝の上流にある、斧の川を意味するオクサルアォの川(Öxará)が凍結した際には、斧で割らなければならなかった、そしてその斧がこの土地の所有者のマークとなったためだ、という説もあります。

行き方

シンクヴェトリル国立公園はアイスランド観光の定番、ゴールデンサークルの一部です。シンクヴェトリル国立公園だけではなく、ゴールデンサークルを目指しましょう。

時期:一年中訪れることができます。

バスツアー:レイキャビク発の半日~1日のバスツアーが数多くあります。

レンタカー:レイキャビクから日帰りで行けるちょうどよい距離です。

人気スポット:大陸の割れ目ギャゥ・アルマンナギャゥ、シルフラの泉

詳しく知る:ゴールデンサークル完全ガイド

施設:ビジターセンターとインフォメーションセンター、有料駐車場が数か所にあり。

スナイフェルスヨークトル国立公園 Snæfellsjökull National Park

スナイフェルスヨークトル国立公園と教会

スナイフェルスヨークトル国立公園は、アイスランド西部のスナイフェルス半島(Snæfellsnes peninsula)にあります。ジュール・ベルヌ(Jules Verne)の小説「地底探検」で有名になった、スナイフェルスヨークトル氷河を取り囲んでいます。

スナイフェルスヨークトル氷河は、美しい成層火山。晴れた日にはレイキャビクのダウンタウンの海の先に、富士山のような形をしたシルエットが見えるはずです。

スナイフェルスヨークトル国立公園は、2001年に制定された唯一アイスランドで海岸まで広がる国立公園でその面積は170㎢です。

切り立つ崖が美しいアルナルスタピ

スナイフェルスヨークトルが火山の昔の噴火の様子が良くわかるのがこの国立公園の特徴です。殆どは苔で覆われていますが、ざらざらでとがった溶岩石や滑らかで粘着性のある溶岩石など、溶岩にも様々な種類があることを物語っています。またこの地域には溶岩から形成された多くの洞窟もあります。

アルナルスタピという小さな村

荒々しい火山の様子が残る一方、海岸は生きいきとしていて、繁殖の時期は多くの渡り鳥で賑わっています。また、アルナルスタピ(Arnarstapi)とヘルナル(Hellnar)を結ぶハイキングコースなど、公園には立派なハイキングコースも沢山あります。

スナイフェルスヨークトル国立公園のビジターセンターは、エリアの南側にあります。ビジターセンターの周囲が特にきれいだ、面白い、というわけではなく、観光スポットは公園の道沿い(海沿い)に点在しています。ビジターセンターを起点とした観光ではなく、ドライブをしながらの観光になるでしょう。もちろんバスツアーであれば、ガイドが案内しますよ!

行き方

スナイフェルスネス半島の国立公園以外のスポットも人気です。周遊して観光したい場所です。

時期:一年中訪れることができます。

バスツアー:レイキャビク発の日帰りツアーや1泊2日のバスツアーがあります。

レンタカー:長距離の運転となるのでスナイフェルス半島で1泊するのがお勧め。

詳しく知る:スナイフェルネス半島完全ガイド

ヴァトナヨークトル国立公園 Vatnajökull National Park

Vatnajökull National Park is one of Iceland's most stunning natural areas, encompassing glaciers, lagoons, mountains and lava plateaus.

Credit: Frits_The_Cat

ヴァトナヨークトル国立公園はアイスランドの南東部にあり、面積は14000㎢と、国土の14%を占めています。2008年までは、ヴァトナヨークトル国立公園の代わりに、このエリアは2つの小さな国立公園に分かれていました。スカフタフェットル(Skaftafell)、そしてヨークルスアゥルグリュブル(Jökulsárgljúfur)国立公園です。より大きなエリアを保護するため、2つの国立公園は統合され、2008年にヴァトナヨークトル国立公園が誕生しました。ロシアのユグィド・ヴァ(Yugyd Va)に続き、ヨーロッパで2番目に大きな国立公園です。ヨーロッパ最大の氷河、ヴァトナヨークトル氷河に因んで名付けられています。

「水の氷河」を意味するヴァトナヨークル氷河は約2500年前に作られ始めたと言われています。この氷河の周辺は比較的穏やかな気候、豊かな土地という利点があり、また、人々は海にも簡単にアクセスできたため、アザラシを狩ったり海鳥の卵を採取したりしていたといいます。

Vatnajökull, the ice cap itself, began to form 2500 years ago.

Credit: Andrés Nieto Porras

しかし1362年、オーラエヴァヨークトル火山( Öræfajökull)が噴火、その頂上を覆っていた大量の氷河が短時間にして溶解、下流へと流れ出しました。ヨークルフロイプ(jökulhlaups)と呼ばれるこの現象は、アイスランド語で「走る氷河」という通り、行く手を遮るものすべてを飲み込み、押し倒し破壊する、非常に危険な現象です。ヨークルフロイプに飲み込まれた地域は、完全な不毛地帯となりました。そうしてこの地は、オーラエヴィ(Öræfi)、アイスランド語で「不毛の地」と呼ばれるようになりました。

農民たちはこの不毛地を耕し利用としましたが、冷涼化する気候のせいもあり、14世紀の豊かであった生活・文化レベルに達することはありませんでした。

かつては豊かだったオーファエヴィも、ヨークルフロイプによって壊滅した

Credit: Ronile

ヴァトナヨークル氷河は広大です。8100㎢にも及び、氷の厚さはは600mから900mにもなります。その氷の下には、多くの山や火山があり、グリムスヴォトンやバゥルザルブンガといった火山も眠っています。

また氷河の南部分にはアイスランドの最高峰、標高2019mのクヴァンナダルスフニュークル(Hvannadalshnúkur)があります。

大きなヴァトナヨークル氷河の輪郭部分には、小さな氷河がいくつもあります。例えば、ヨークルスアゥルロゥン氷河湖に隣り合うブレイザメルクルヨークル氷河。この氷河だけでも相当な大きさですが、あくまでもヴァトナヨークル氷河の一端でしかありません。

Visiting an ice cave is one of the most unique activities you can participate in, not just in Iceland, but the world.

ヴァトナヨークル氷河が有名になった理由の一つは、氷の洞窟、アイスケーブの存在でしょう。

氷河にできるこの美しい洞窟は、気温の低い冬にしか訪れることができません。アイスランド特有の自然が作り出す、珍しい自然現象です。【アイスランドの氷の洞窟について

また、この氷の洞窟へのツアーの出発地点となることが多いのがヨークルスアゥルロゥン氷河湖。夏にはボートツアーもあり、季節を問わず絶景が楽しめるスポットです。その隣のダイヤモンドビーチも人気のスポットです。

ヴァトナヨークトル氷河の末端の氷が解け、海へと流れ着いた

ヴァトナヨークトル国立公園にはビジターセンターが数か所あります。一つは、アイスランド南東部のスカフタフェットルにあるビジターセンター。ドライブの際にはここを拠点にしてハイキングを楽しむことができます。なんといっても広大な国立公園のため、いくつかの管轄に分かれています。訪れる際も、公園を目的地に設定せず、そのエリアの行きたい場所ごとに計画をするのがおすすめです。

行き方

時期:一年中訪れることができますが、レイキャビクからは遠いので冬には注意が必要です。

ヴァトナヨークトル周辺へのバスツアー:夏は日帰りバスツアーがありますが、途中の観光スポットも多くあるので1泊2日のツアーがお勧め。冬には氷の洞窟も訪れる1泊2日のツアーが便利です。

レンタカー:片道6時間から7時間かかり、途中の観光を含めると丸1日かかることも。余裕をもって1泊2日、または2泊3日あるといいです。時間を忘れてしまうような風景が多いので、時間があまることは無いでしょう。

人気スポット:氷の洞窟・アイスケーブ、ヨークルスアゥルロゥン氷河湖、スカフタフェットル

詳しく知る:完全ガイド氷の洞窟 ヨークルスアゥルロゥン氷河湖